「笑いの体操」と「ヨガの呼吸法」を融合した体系を「笑いヨガ」と言います。
誰にでもできる健康体操です。
よくお笑いと捉えられがちですが、そうではなくて、息を吐きながらの体操です。
お腹に力を入れて、表情の筋肉を動かす笑いの体操と、ヨガの呼吸法を融合させて笑いヨガです。
「ホッ・ホッ・ハハハ」と笑いながら、手拍子も合わせます。
1995年にインドのマダン・カタリアというお医者さんが始めました。
運動指導の分野でも少しずつ広がってきています。
九州ではまだまだなので、今、私が広げていこうとしている段階です。
笑いヨガの効用はすごいですね。
私は勝手に、「2つのコア」という言い方をしています。
1つは、体のコアのトレーニングで「体幹筋」を鍛えるものです。
通常は、持久系トレーニングではなくて筋力トレーニングとして、運動指導員としてはよく行います。
それは体のコアを鍛えることです。体の真ん中ですから、とても重要です。
それにプラスして、私は人間にはもう一つコアがあると思っています。それは脳です。
人間のもう1つのコアは脳=心・精神=メンタルのコアです。
その脳に一番近い筋肉が表情筋です。
人間の2つのコアを考えると、体のコアは体幹筋という筋肉ですが、
もう1つ心・精神のコアは表情筋なのです。表情筋は笑うことにより鍛えることができます。
笑いの健康効果としては、メンタルの効果に留まらず、例えば免疫力アップなどがよく知られていますが、
この表情筋を、ストレッチでもなく筋トレでもなく、持久力的に動かすというエクササイズは、
笑いヨガにしかないんです。
体幹筋と表情筋。その2つを持久力的に動かすことは、
運動指導の定義で言う「有酸素運動」に当たり、体の内部で好ましい生理学的な変化が起こります。
高齢者には、肩が上がらない方や膝が悪い方が大勢おられます。
そういう方は、ダンベル運動や立ち座りも難しかったりします。
しかし、デイサービスにいるような介護が必要なお年寄りであっても、
表情筋と体幹筋は残存機能として残っています。
その2つを動かし続けることで、低体力者・病弱者でも充分な持久力的なトレーニングができるのです。
それによる健康効果というのは、例えば体が温まる、免疫力の向上など、たくさんあります。
本もたくさん出ていて、かなり科学的に立証されつつあります。
ストレスホルモンのコルチゾールが落ちるなどの成果が分かってきています。
さらに、セロトニン(分泌不足がうつ病の原因の一つと考えられている)なども、
分泌されることが分かっています。
現在は、福岡大学スポーツ科学部体育心理学実験室の、山口幸生教授と共同研究させてもらっています。
対象としては、もちろん私が運動指導員なので、まず運動指導員に対して「この笑いヨガというのを身につけるとこんな風に役立ちますよ」と伝える役割を担いたいと考えています。
運動指導員以外の対象ですが、指導内容が「笑いヨガ」となった瞬間に、不思議なことに一挙に間口が広がってしまう現象が起きています。
例えば行政で言うと、今までは健康課や介護サービス課のような部や課からの仕事がほとんどでした。それが笑いヨガの運動指導となったとたんに、学校教育課、生涯学習課、PTA、家庭教育学級や、公民館の市民大学講座、男女平等参画社会。あとは自殺予防の『いのちの電話』、お寺での「仏教婦人会」など、一挙に対象が広がりました。
ですから、いろいろな形で提案の場が広がるという意味でも、ぜひ運動指導員として笑いヨガをやっていきたいと思っています。
介護の分野でも、介護の場をより良いものにしようと思っている方はたくさん居られます。そういう人たちにとって一つの有力なツールとしての提供もできるのではないか思います。
幸いこの笑いヨガは非常にシンプルな内容で、ある意味、原始的と言って良いくらいです。シンプルな基本に、いろいろなスキルを上手く組み合わせることにより、幅広い分野に適用できるのではないかと考えています。そうやって広がっていけば良いと思います。
笑いヨガについて話し出すと何日あっても足りないのですが、1時間程度の体験会、2〜3時間のセミナーなど、要望に応じた出前講座をしています。一般の人にも具体的な事例を添えて、分かりやすくお話ししています。
笑いヨガと出会う前は、自分の価値観で何か新しいことやりたいと思っていました。
自分の考えを実現したいとの思いが募り、運動指導員として勤務していた会社を辞めることにしました。
勤めていた会社は、非常に科学的で研究熱心で、健康づくりの王道を歩んでいました。
それは本当に正しくて素晴らしい仕事でした。しかし私は、自分の感覚をいつも優先していました。
それで度々、迷惑をかけることがありました。
辞めても先のことは分かりませんでしたが、自分の感覚を大切にしたいと思い独立を志しました。
退職して2カ月経った時のことでした。当時の社長に勧められて年間購読していた『致知』という雑誌に、
笑いヨガの記事が載っていたんです。それがずっと頭に残っていました。
退職後は、自分の可能性に掛ける熱い思いと同時に、
チームプレイができない自分をみじめに思う気持ちが同居していました。
ですから、自分を変えたい想いもあり、心理カウンセリング、コーチング、神経言語プログラミング(NLP)、カイロプラクティック整体、お笑いまで、いろんなものを貪るようにチャレンジしました。
その中の一つが笑いヨガでした。当時は、笑いは必要だろうから・・・そんな程度のイメージでした。
日本笑いヨガ協会にお電話しました。
すると高田佳子代表から「今度福岡でセミナーをやるから」と直々に電話がありました。
笑いヨガリーダー養成講座のセミナーです。笑いヨガの指導者を我々は「笑いヨガリーダー」と呼びます。
その講習をやるからということで直々のお電話をいただいて、研修に参加しました。
それが、運動指導員としてやってきて、辞めて、何かしら模索しようとしていた頃の私と、
笑いヨガとの初めての出会いでした。
左 笑いヨガ(ラフターヨガ)の創始者
マダン・カタリア医師
右 日本笑いヨガ協会
代表 高田佳子
中央 ウエルネス・サポート
代表 佐藤昌久
ラフターヨガ・インターナショナル・ユニバーシティ(Laughter Yoga International University)は、
世界共通の協会です。日本では大きな組織が3つぐらいあります。
私の師匠、高田代表がおられるのが日本笑いヨガ協会です。
笑いヨガの創始者は、マダン・カタリアというインドのお医者さんです。
ドクターで、執筆のため笑いのことを一生懸命研究されていたそうです。
笑いの健康効果は昔から言われていて、古くは聖書にも載っているし、
カントもフロイトもやはり笑いは健康に良いと言っています。
歴史的に良いということは分かっている訳です。
しかし、それをエクササイズに応用した笑いヨガが出来たのは、
何千年も前ではなくて、1995年ですから阪神大震災の年です。
笑いの健康効果は良いなあ、それなら笑うことをプログラムにできないかと、
マダン・カタリアは思ったんですね。
それで、笑うことは、スマイル(smile)は「ニコッ」ですが、
「ハハハ」と声に出すのは「ラーフ(laugh)」なんですね。
だから笑いヨガっていうのは日本語名で、それを英語にするとラフターヨガなんです。
ですから息を吐く「ハーハーハーハー」って、声を出しながら笑う、
そういった息を吐くヨガの呼吸法と、見たままのマネをしながら進む体操との融合なんです。
ヨガの呼吸法に関して言えば、マダン・カタリアの奥さんがヨガの熟達者でした。
それで「ヨガの呼吸法」と「笑いの体操」の一体化が実現したのです。
きっかけは、ドクターが1995年3月13日朝4時に目覚め、その日の朝7時に公園に行って、
公園を歩いている人に「僕と一緒に笑ってみないか」と誘われました。
しかし、ほとんど無視されたそうです。
その中で4人だけが付き合ってくれた。それが1995年ですね。
これが笑いヨガの出発点となりました。
笑いヨガは、参加された人たちの反応がすごいですね。
それまでは「また来てください」と言われるぐらいでしたが、
「次のこの日は空いていますか?」と積極的に聞かれるようになりました。
もちろん以前も私なりにちゃんとした運動指導を心掛けていましたし、
それなりにご好評いただいていましたが、でもその頃とは次元が違う感じです。
自分でも間違いないと思える手応えを感じています。
以前の指導内容やテーマが悪く、今の笑いヨガが良いからだとは考えていません。
笑いヨガをやる事により、自分に変化が起きたので参加者の反応が変わったと感じています。
それまで起きがちだったトラブルもなくなりました。自然体でできているのではないかと思います。
今後のビジョンですが、どうしても笑いヨガというものは、お笑いと混同されがちなところがあります。
それはそれで一つの売り方にもなるので悪いことだとは思いません。
しかし私としては、大学時代に先生方から教えていただいた生理学的なバックボーンや、
それにプラスα、心理学的な、メンタルな分野の新たな提案として、
笑いをきちんと捉えたいと考えています。
共同研究の内容については、先生方のオリジナリティがあるので詳しくはお話しできませんが、
科学的な論拠をしっかり押さえながら、笑いの健康効果などを広く伝えていきたいと思っています。